入居者が室内で亡くなり「原状回復は全額負担」と言われたら?敷金診断士の実例
ご家族が住まいの室内で亡くなったあと、退去の手続きと費用の請求に戸惑う方は少なくありません。ここでは、敷金診断士が第三者として部屋の状態を調査した実例をご紹介します。
家族が室内で亡くなった部屋の退去費用は、言われるまま払うしかない?
そうとは限りません。部屋の修繕にかかる原状回復の費用は、ほかの退去と同じく、国土交通省のガイドラインの考え方で整理できます。この事例でも、最初は全額負担と言われましたが、亡くなった場所以外の部分は、ガイドラインの考え方に沿って当事者どうしで話し合うことができました。
一方で、いわゆる事故物件になったことへの補償の話は、原状回復とは別の問題として考える必要があります。
どんな相談だったのか?
8年ほど前、賃貸マンションに6年以上住んでいた方が、室内の浴室で亡くなりました。
退去の手続きをすることになった息子さんは、管理会社から「原状回復にかかる費用は全額払ってほしい」と言われ、第三者として部屋の状態を調べてほしいと、当事務所に調査をご依頼くださいました。
敷金診断士は、どんな立場で関わったのか?
第三者として部屋の状態を確認し、ガイドラインの考え方に照らした目安をお伝えする立場です。相手方との交渉や代理は行っていません。費用について話し合い、最終的に判断するのは当事者です。
立会いの前に、何をしたのか?
立会いの前に部屋の状態を確認し、ご家族には、一般的な準備として、できる範囲で部屋の掃除をしておくようお伝えしました。
壁紙や床の費用は、どう考えた?
6年以上住んでいたため、ガイドラインの考え方では、壁紙や床材は経過年数によって価値がほとんど残っておらず、借主負担の目安はごく小さいと考えられました。貸主側も、ガイドラインに沿って進める姿勢でした。
その結果、亡くなった浴室以外の部分については、全額負担ではなく、ガイドラインの考え方に沿って当事者どうしで話し合いを進めることができました。
経過年数の考え方は、クロス(壁紙)の経過年数と負担割合の考え方でも解説しています。
浴室の交換費用は、どうなった?
貸主側からは、次の方に貸すために、浴室をすべて新しくしてほしいという希望がありました。この点について、私は意見を述べる立場にないと判断し、ご本人の判断にお任せしました。
ガイドラインの考え方では、設備にも経過年数による減価償却の考え方があります。そのうえで、この事例では、ご本人が、浴室を新しくする工事費約30万円を負担することを選ばれました。敷金約15万円が差し引かれ、支払いは約15万円になりました。
調査でお伝えする目安は判断の材料であり、最終的に決めるのは当事者です。
事故物件になったことへの補償は、どう考える?
原状回復とは別の問題です。この事例でも、貸主側とご家族の間で補償について個別に話し合いがあったようですが、法律の判断が関わる問題のため、私は関わっていません。
このような請求を受けたときは、弁護士にご相談ください。
人の死の告知について、国の決まりはある?
令和3年に、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を定めました。これは、不動産会社が次の入居者に何をどこまで伝えるかの目安を示したもので、補償の金額を決めるものではありません。この事例は、このガイドラインができる前のものです。
ご家族が、まず気をつけたいことは?
亡くなった方の荷物を処分する前に、必ず弁護士・司法書士にご相談ください。荷物を処分すると、借金なども含めて相続したとみなされる場合があります。
そのうえで、部屋の修繕の費用(原状回復)と、それ以外の請求(補償など)を分けて考えることが大切です。
ご家族からは、どんな声があった?
立会いのあと、息子さんから「一緒にいてもらえただけで安心でした」と言っていただきました。突然のことで、何をどう考えればよいかわからない中、第三者がそばにいることにも意味があると感じた事例です。
ひとりで抱えずに、ご相談ください
原状回復の費用について、まず目安を知りたい方は「退去費用ナビ|しんだん君」をご利用ください。登録も個人情報の入力も不要です。
退去費用ナビ|しんだん君で目安を確認する →アプリの結果は入力内容にもとづく参考試算です。個別の状況は LINE無料相談 で承っています。
補償や相続など法律の判断が関わることは、弁護士・司法書士にご相談ください。
本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を参考にした一般的な情報提供を目的としており、法律相談・法的判断・交渉代理を行うものではありません。敷金診断士は、相手方との交渉や代理は行いません。実際の負担額は賃貸借契約の内容(特約を含む)や物件の状況、当事者の話し合いによって決まります。事例は、個人や物件が特定されないよう一部の内容を変えています。補償・相続など法律の判断が関わる問題は、弁護士・司法書士にご相談ください。