退去費用650万円の見積もり、敷金診断士の調査で示した目安は約150万円

書いた人:敷金診断士 浅井世郎(認定番号09223003)

部屋が大きく傷んでいると、「見積もりの金額をそのまま払うしかない」と考えがちです。ここでは、約650万円の原状回復の見積もりに対し、第三者として調査した実例をご紹介します。

部屋がひどく傷んでいたら、見積もりの金額をそのまま払うしかない?

結論

そうとは限りません。国土交通省のガイドラインでは、借主の故意・過失による損傷であっても、壁紙や設備の経過年数を考慮する考え方が示されています。この事例では、約650万円の見積もりに対し、第三者として調査した結果の目安は約150万円でした。

敷金診断士は、どんな立場で関わるの?

第三者として部屋の状態と見積もりを調べ、ガイドラインの考え方に照らした目安を調査書にまとめる立場です。結論を決めるのではなく、当事者が判断するための材料をお渡しします。

相手方との交渉や代理は行わず、金額を決めるのは当事者どうしの話し合いです。

どんな部屋だったのか?

15年ほど前、三重県内の分譲マンションを会社が借り、社員の方が約7年住んでいた部屋です。

実例:部屋の状態

ペット不可の契約でしたが、猫を多頭飼育しており、猫が天井のプラスターボードを引っかいて多数の穴があいていました。便器も破損し、残されたごみも大量でした。

退去立会いは一度終わっていましたが、再立会いの機会ができ、借主である会社の担当者から、中立の立場での現地確認と調査を依頼されました。

12月の風の強い日でした。強い獣臭に思わず窓を開けると、ほこりが一気に舞い上がり、部屋の傷み具合をあらためて実感しました。

見積もりのどの項目を、どう調べたのか?

主に次の4つの点を、ガイドラインの考え方に照らして整理しました。

  1. 壁紙・クッションフロア:経過年数から材料の価値はほぼ残っていないと考えられるため、材料費は借主負担の目安に含めず、張り替えの工賃の一部を借主負担の目安としました。
  2. 天井のボード:部分補修で対応できる箇所は、部分補修を前提に整理しました。
  3. 設備:新品に交換する設備は耐用年数による減価償却を行い、交換せずに使い続けられる設備は、人工賃(作業員の手間賃)や材料費の内容を一つずつ確認しました。
  4. 現場監督費:数十万円の「現場監督費」は、契約に特別な定め(特約)がなかったため、負担の可否について意見を出さず、契約書の「協議」の定めに沿って当事者どうしで話し合っていただくことにしました。

経過年数と負担の考え方は、クロス(壁紙)の経過年数と負担割合の考え方でも詳しく解説しています。

依頼者側から「もう少し低くならないか」と言われたら?

調査結果の数字は変えませんでした。調査書をお渡ししたあと、依頼者側から「あと20万円ほど低くならないか」というご相談がありましたが、何度見直しても調査の結果は同じ約150万円でした。

調査書は、どちらか一方の希望に合わせて作るものではありません。誰が依頼しても、同じ部屋なら同じ結果になることが、第三者による調査の前提だと考えています。

その後、当事者どうしの話し合いで解決したとご連絡をいただきました。最終的な金額はうかがっていません。

今のガイドラインでも、同じ考え方になる?

基本の考え方は同じですが、計算方法は変わっています。この事例は平成16年版ガイドラインの時期のものです。

注意点

平成23年の改訂で、耐用年数を過ぎた設備の価値の考え方が変わり、一般に、今のほうが借主の負担の目安は小さくなる傾向があります。ご自身の請求を考えるときは、現在のガイドラインの考え方を参考にしてください。

この事例から言えることは?

三重県でも相談できる?

はい。愛知県・岐阜県のほか、三重県でも立会いによる現地確認を行っています。退去後の書類による調査は、全国からご依頼いただけます。

自分の請求が気になる方へ

この事例のように大きな損傷がある場合でも、項目ごとに経過年数を考えると、見え方が変わることがあります。ご自身の請求については、まず「退去費用ナビ|しんだん君」で目安を確かめてみてください。請求書にある項目を選んで質問に答えるだけで、登録も個人情報の入力も不要です。

項目ごとの参考金額や考え方の解説、管理会社とご自身で話し合うときの参考文例が必要な方は、詳細診断(2,980円・税込)もご利用いただけます。

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アプリの結果は入力内容にもとづく参考試算であり、実際の負担額を判断するものではありません。
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愛知敷金診断士事務所(しんだん君)代表。一般社団法人日本敷金診断士協会 所属。敷金診断士として18年・4,500件の実績。国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づき、第三者として退去費用・原状回復に関する調査と情報提供を行っています。相手方との交渉や代理は行いません。

本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を参考にした一般的な情報提供を目的としており、法律相談・法的判断・交渉代理を行うものではありません。敷金診断士は、相手方との交渉や代理は行いません。実際の負担額は賃貸借契約の内容(特約を含む)や物件の損耗状況、当事者の話し合いによって決まります。事例は、個人や物件が特定されないよう一部の内容を変えています。法的な争いになっている場合は、弁護士にご相談ください。